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【書訊】内田純子:《中国殷代の青銅器と酒》

先秦秦漢史 先秦秦汉史 2023-10-18

発酵技術、酒を伴う儀礼、鋳造技術が響き合うように発展した殷代。精緻華麗なあの青銅器を生み出した時代を描く。

中国殷代の青銅器と酒

著者 内田 純子 著

ジャンル 歴史・考古・言語

シリーズ ブックレット《アジアを学ぼう》

出版年月日 2023/10/25

ISBN 9784894898158

判型・ページ数 A5・64ページ

定価 本体700円+税


目次

はじめに

 1 殷代とは

 2 殷代という時代

 3 青銅酒器の種類の増加や盛衰の謎

一 中国初期王朝期の青銅器の展開

 1 最初の青銅容器とその用途、温酒の謎

 2 青銅器の製作方法

二 醴(れい)の儀礼

 1 文献からみた三種の酒

 2 醴の儀礼と酒

 3 醴の儀礼に不可欠な紋様――饕餮紋

三 酒と卣(ゆう)の発展

 1 酒(清酒)を入れる容器「卣」

 2 卣を中心とした酒器へ

四 酒の種類の変化と社会の変化

 1 殷墟二期からの酒器の変化

 2 殷代の社会の変化

 3 古代酒の科学分析による原材料の同定

 4 醴の起源と米どころの衰退

 5 殷墟二期の江南文化の衰退

おわりに

 1 酒と社会の変化

注・参考文献

あとがき

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内容説明

お酒が代われば、器も変わる!?

発酵技術、酒を伴う儀礼、そして鋳造技術──殷代はこれら3つが響き合うように発展した時代でもあった。精緻華麗なあの青銅器とそれを生み出した時代を描く、歴史・考古の学術的エンタテインメント。

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はじめに より

1 殷代とは

 夏王朝、殷王朝という中国古代の初期王朝を知っているだろうか。黄河の下流域にあたる中原地区に栄えた古代王朝で、前者がおおむね紀元前二〇〇〇年から紀元前一五〇〇年、後者が紀元前一五〇〇年から一〇四五年ごろまで栄えたとされている。

 殷王朝は、私たちの使う漢字の起源となった象形文字が成立した時代である。その原始的な記号のような文字は、占卜に使用した甲骨の上に彫り込まれたので、甲骨文字と呼ばれている。甲骨文字は、この時代の考え方や社会情況を研究する上での、重要な文字資料となっている。

 さらに殷王朝は、青銅器が盛んに作られたことでも有名である。青銅器とは銅と錫の合金「青銅」を使って作られた器物のことで、殷代の青銅器は、鋳型をたくさん組み合わせて、複雑な形状の様々な青銅容器を鋳造していた。その装飾性の高さ、形状の複雑さは、世界中、古今東西で製作された青銅器の中でも群を抜いており、芸術品としての評価も高く、人々を魅了する。その上に施される紋様もまた、実にさまざまな種類がある。

 さて、筆者は、殷周時代の青銅器の研究を三〇年以上続けてきた。青銅器が世界に類を見ないほど発達した背景には、殷代の酒や儀礼とそれをめぐる社会の変化が大きく横たわっていると考えている。殷王朝の時代には「酒池肉林」という有名な故事がある。殷王朝の最後の王「紂王」が、贅沢をこらして男女を集め、酒を満たした池と、肉を掛けた木々の間で遊ばせ、淫らな酒宴をおこなったという故事で、「こんな自堕落なことをしていたから、殷王朝は滅びたのだ」という文脈で『史記』殷本紀には書かれている。一つの国が滅びてしまうほど、殷の人たちはお酒が好きだったのだろうか。同様に、『尚書』(書経)酒誥にも、「庶群自酒、腥聞在上。故天降喪于殷」(紂王の周囲には人々が群がり集まり飲酒に耽り、その生臭い汚れた悪臭が天上に達するに至った。そこで上天は遂に滅びるべき運命を殷の国に降したのである)などなど、散々に書かれている。「殷王朝はお酒で滅んだ」という考え方は、その後の時代の西周時代に、政権交代の正当性を訴えるために作った作り話ではないのだろうか。

 本書では、殷時代の酒と、驚くほど発達を遂げた青銅器のうち、酒器について論じたいと思う。実は、殷の人たちが祭祀の折に飲んだ酒は、もともとアルコール度の低い甘酒だった。そこへアルコール度の高い酒が加わった結果、青銅器の種類も増えていったということを述べていきたいと思っている。

 まだ文字による完全な記録の残っていない殷の時代であるから、青銅器や土器などの考古学資料と甲骨文字、後世に書かれた文献など、断片的な資料をつなぎ合わせて考察していきたい。

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著者紹介

内田純子(うちだ じゅんこ)

1963年、東京都生まれ。

京都大学大学院文学研究科考古学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。

2006年より中央研究院歴史語言研究所(台北市南港区)にて、助研究員・副研究員を経て、研究員。中国考古学専攻。2001年より2002年まで、松下国際スカラシップにより、中国社会科学院考古研究所に留学。

主要論文に、「初現期の青銅彝器」,『史林』72.2(1989)、「商代的酒器與青銅禮器」(陳光祖主編『金玉交輝:商周考古藝術與文化論文集』臺北:中央研究院歷史語言研究所,2013)、Koji Mizoguchi & Junko Uchida, “The Anyang Xibeigang Shang royal tombs revisited: a social archaeological approach,” Antiquity (2018)、“The Transformation of Gender Construction in Late Shang Dynasty,” Japanese Journal of Archaeology, Vol.10, No.1(2023)など。

本文转载自"NADPH"微信公众号,特此致谢!

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